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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
と、思うと、頭の中で
(証拠品を持って帰りました。今すぐに御覧に入れます)
と、叫んだ。
「兄様?」
次の娘、深雪の声が聞えた。小太郎は、戸を一つ叩いた。
「只今――」
二人の足音がした。閂が外れた。戸が引かれた。上の姉の綱手が上り口に立って、手燭をかざしていた。深雪が
「首尾は?」
低い、早口であった。
「上々」
深雪は、小兎のように上り口へ、走り上って
「姉様、上々」
綱手が、微笑んで、廊下を先へ立った。
「お父様は、お臥みだけれども、お母さんは、未だ」
深雪が、小太郎の後方から、口早に囁いた。薄く灯のさしている障子のところで、綱手は手燭を吹き消して
「お母様、お兄様が、上々の首尾で、ござりますって」
いい終らぬうちに、小太郎が、部屋の中へ入った。七瀬は、小太郎の膝を見て
「ひどい泥が――」
と、眉をひそめた。二人の妹が
「ああ、あっ、袖も――ここも――」
深雪が立って、何か取りに行った。
「その箱は?」
七瀬が、眼を向けた。
「若君の御病間の床下にござりました。調伏の証拠品」
両手で、母の前へ置いた。
「お父様に、申し上げて来や」
綱手は、裾を踏んでよろめきながら、次の部屋の襖を開けた。