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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「益満さんでは?」

益満が、駕の中から、振向くと、南玉が

「矢張りそうだ」

と、いうと、すぐ、後方へ

「若旦那」

と、叫んだ。益満が

「駕屋、とめろ」

と、云った。

「駕屋、橋詰で、待っていてくれんか」

益満は、行手の方を指さした。二人の駕屋は、深雪を、じっと眺めてから、囁き合って、去って行った。

「ところも、瀬田の唐橋で、手前に大津とは、紀妙寺、へい、今日は」

南玉が、御叩頭をして、後方を振向くと、庄吉が

「何うも――今日、逢えるか、明日、逢えるか」

「お久しゅう存じます。お変りござりませぬか、その節にはいろいろと――」

と、深雪が、丁寧に、手を膝へおろして、挨拶するのを

「小太、一寸来い」

益満は、大声で、小太郎へ叫んで、欄干へ凭れかかった。小太郎が、静かに近づいて

「いろいろと、世話をかけたらしいが」

「大津から、叡山へでも行くのか」

「そのつもり」

益満は、頷いて

「わしは、真直ぐに、京へ入る」

南玉が

「いかがでしょう、一寸、叡山参詣は? 四明から見下ろすと、京の町中は一望の下に」

益満は、それに答えないで

「牧の消息は、判っているのか」

「大阪らしいが。とにかく、叡山へ行って、牧が、修法を済ませたか、済ませぬかを見届けた上で、いずれとも、考えようと思う」