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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
爺が、表へ出て、下を眺めて、すぐ入って来た。そして
「婆、ござらしたぞ」
と、云った。
「先生、芋粥が――」
玄白斎は、頷いた。そして、眼を開いて、身体を起して
「わしには判らん――」
と、呟いた。
「何が?」
「いや、食べるがよい」
三人が、茶碗へ手をかけると、表が、騒がしくなった。
馬上の士が一人、駕が一梃、人々は、悉く脚絆掛けで、長い刀を差していた。茶店の前で立止まって、すぐ腰かけて、脚を叩いた。
「疲れた」
と、一人は、股を拡げて、俯向いた。
「爺、食べる物があるか」
「芋粥なら丁度出来ておりますが、あのお髯の御武家衆は貴下方のお連れではござりませぬか」
「お髯の――幾人?」
「御三人」
侍は、首を延して、奥を覗いたが、襖で何も見えなかった。士は、土間から出て、軒下の腰掛にかけている一人に
「斎木」
「うむ」
「玄白斎が、参っておるらしい」
低い声であったが、こう云うと同時に、人々は、動揺した。
「玄白斎が――」
と、一人が怒鳴った。馬上の士が、馬から降り立って、土間へ入って来て、三人の草鞋を見ると
「これは?」
と、爺の顔を、咎めるように、鋭く見た。
「はいはい、これは、奥にいられます、三人の、お侍衆の――」