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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
月丸は、庄吉を一打ちにしようと、睨みつけていた眼を、深雪に向けて
「仇敵?――綱手の?――いかにも」
と、云って、頷いた。
「深雪さん――危い。そりゃ、無茶だ。そんなことで、貴女――」
南玉は、深雪の横へ来て
「討てるものか。そりゃ、貴女の気性として――」
と、腕へ手をかけた時
「綱手の仇敵? 成る程――無理も無い。討たれてやりたい――その志に免じて」
月丸は、蒼白な顔に、冷たい微笑をしながら
「綱手も、喜ぶであろうが――」
じっと、深雪を、凝視めていて
「あはははは」
と、笑い出した。
三人は、じっと、月丸の顔を、眼を、脚を、手を、凝視めながら――それを、凝視めているの外
(今に、大変なことが起る)
と、いう恐怖に、肌を、冷たく、顫えさせているの外――山の静けさも、物音も、何も感じなくなっていた。
南玉は、脚も、手も、顫わせながら
(折角、ここまで、漕ぎつけて、ここで、深雪さんを殺しては――)
と、思ったが、何うすることも、できないので、手近い、灌木の枝を、しっかり掴みながら、捻じ折っていた。
庄吉は、すっかり逆上してしまって、その眼は、殺気に輝いているし、米噛は興奮にふくれているし――月丸の隙を覘っていたが、微かな不安と、恐怖とがあって、突込んで行けば、抜討を食うかもしれないし