Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「斬られたいか」

南玉も、庄吉も、もう口が利けぬくらいに、呼吸づまり、緊張し、興奮してしまっていた。

月丸の顔に、赤味がさしてきた。殺気とも、微笑ともいえぬ閃きが、深雪の顔へ、そそがれていた。

「深雪」

月丸は、その眼から、脣へ、微笑をうつしてきて

「脇差を捨てい」

月丸は、綱手の、若葉のような耳朶を思い出していた。赤く、差恥に染んだ時、濃い白粉の刷かれている時――その二つながらの時に、囁いた言葉――張り切って、艶やかな四肢、閉じている眼瞼のうるおい、喘ぐ呼吸に動く鼻翼、少し開いた脣と、歯。ひそめた眉の媚めかしさ――月丸は、一生をかけた綱手のその面影を、もう一度、深雪の身体の上で、見たいと思った。

(この山中の、人のおらぬところで――そして、殺してしまって――)

月丸は、全身に熱を含ませながら、綱手とのことを思い出し、深雪とのことを考えて

(この思いを遂げた上でなら、小太郎に殺されてもいい)

と、まで感じた。

「無益の、腕立て」

月丸は、微笑しながら――だが、その眼を淫獣の如く輝かせて、深雪の方へ、一足踏み出した。

「野郎っ」

と、庄吉は、絶叫した。月丸の口へ出さない心が、庄吉には、愛する者の、鋭敏な心の働きとして