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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
何卒一つ、十分に――」
「妾も、それは、心得ますが、牧の行方を調べて、牧の意見――斉彬を、呪えるか、呪えぬか、何より、かより、それが一番大事なことゆえ、心利いた者を、すぐに、走らせてもらえませぬか」
「心得ましてござります」
将曹は、暫く考えていたが
「こちらより、両三人の者を――お方には、誰か、心づいた者がおりませぬか」
「ここより人を出しては、目に立つであろうがな。それより、京か、大阪の邸の者に、頼んで――」
「いいえ」
将曹は、首を振って
「京、大阪には、不逞者が、近頃うんと居りまして、却って、危うござります。斉彬を担ぎ上げて、幕府を倒そうなどと――この風説一つだけででも、幕府としては、聞きずてにならぬのを、知らぬ顔をして、異国掛に引上げようなどと、この肚黒い、魂胆の底には、当家の金、調所の残しておいた金が――金に目をつけての仕業でござりましょう。無けりゃ困るし、あってはうるさし――」
と、いった時
「久光様、お渡り」
と、いう声が、廊下でした。お由羅が
「また――」
と、呟いた。将曹が、立上って
「只今、そちらへ――」
と、叫んだ。そして、足早に歩き出すと、襖のところに、手燭の灯が見えて、久光が、足早に入って来た。