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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

「お断り申す」

牧は、鋭く云った。そして、つっと立上ると、次の間を抜けて、廊下へ出て、手を叩いた。老人は、じろっと、その後姿を、睨みつけていたが

「それでは――牧殿」

と、声をかけた。牧は、廊下へ立ったまま、出て来た女中に

「山内が、その辺に居らぬか、お捜し下さるよう」

女中が、去ると

「牧殿、これへ、御手当金を、置いておきますぞ」

と、云って、金包を出して、畳へ置いて、押えつけた。そして

「どれ――どれ」

と、呟いて、立上った。遠くに、山内の笑声が、女の、甲高い叫び声とがして、すぐ、廊下に、山内らしい、荒い足音が、近づいて来た。老人が

「えらい強いお方じゃ」

と、又、呟いて、戻りかけた。

「今日も、お暑うござります」

義観の姿を見た、力餅屋の亭主が、丁寧に挨拶をした。

「暑いなあ」

茶店の中にいた若い僧侶が、立上って、お叩頭をした。そして、今まで、食べていた餅の、皿を持って、片隅の方へ寄った。外の登山者達は

(汚いなりの坊さんやが、えらいのだろう。えらい人には、時々、こんな汚いえらい人があるという話だが――)

と、思って、義観を眺めていた。

「えらい騒ぎが、又、ございましたそうで」