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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

久光は、斉彬程の人物が、うなされるとは信じられなかった。

(哲丸が、死んだというが――あの、死んだ子供達と同じ病ではないのか? 最後の子供を殺して、それから、斉彬公の――)

ふと、そう感じたが、斉彬の理化学に影響されている久光にとって、それは、愚かな閃きであると、すぐ打消されるべきことであった。医者が、手と、身体を動かして、斉彬の方へ顔を差出した。斉彬の眼が、瞼毛が、微かに動いたらしかった。久光は、心の中で

(兄上)

と、叫んだ。

(久光が参っております)

久光は、息をつめて、斉彬の顔へ、見入った。

斉彬は、眼を上げたが、物を云わなかった。久光は、その眼の光の鈍さに、心臓を冷たい手で掴まれた。

「如何でござります」

斉彬は、それに答えないで、もう一度、眼を閉じた。久光は

(苦しいのだろう?)

と、自分の健康な体力を、兄へ透そうとでもするように、膝に、身体に、力を入れて

「さすりでも――」

と、まで云った時、斉彬は、顔を歪めて、肩で、大きい息をした。三人の医者が、全身の神経を、斉彬の顔へ集めて、のぞき込んでいた。斉彬は、二三度、大きく呼吸をしてから、眼を開いた。