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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「面白がって居ちゃ困りますよ。昨日八丁堀へ顔を出すと、笹野の旦那がひどくお困りの様子で、――平次は何をして居るんだ、髷切りを放って置くと、八方から文句が来て、大困りだが――とこぼして居ましたよ」
「成程な、考えて見ると笹野の旦那も、二本差に違いはない。尤もあの方は吉原などへフラフラと出かけて、髷節を切られるような方ではないがね――」
「ところで親分、その髷切りの曲者は誰だと思います」
「それが解らないから不思議だよ、鎌いたちや流行風邪でないことは確かだが――」
銭形平次の智恵も其処から先は何うしようもありません。
「此節急に蔓こって来た、町奴や男達の仕業じゃありませんか」
「それも考えられないことはないが――」
武家の暴慢と無道に対して、敢然として立った江戸の町奴。放駒四郎兵衛や幡随院長兵衛の亜流が、その頃漸く江戸の町を我物顔に横行して、時々は眼に余る所業もするようになって居たのです。最初はもとより武士階級、わけても旗本の横暴に対する反抗で、江戸の町人共にやんやと言われたに違いありませんが、それが人気と勢力を得るに従って、あべこべに町人共の迷惑になったことも少くないとは言えず、平次が活躍して居る頃の江戸の町奴は、まことに痛し痒しの存在になりかけて居たのです。