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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
親譲りのこの店が狙いだったのさ、畜生奴」
「――――」
「八さんにでも惚れて居れば無事だのに、弁口と男前が癪だよ。ツイ私は口説き落されて、それから何度店を畳もうかと相談したけれど、兵二郎は許してくれない。許さなかった筈だよ。私を口説き落してすぐ、砂土原町の後家のお増に眼をつけたんだ」
「砂土原町の後家のお増というと」
「伊勢屋の後家だよ、たいした身上だとさ。それをつけ廻して三年、とうとうものにしたじゃないか、忘れもしない、あの前の晩だよ」
「なるほどな」
「伊勢屋の後家をものにした矢先だ、下手な笛を吹いて、三百文に酒一升じゃ割に合ない、兵二郎はあの晩後家に逢いに、砂土原町に行ったに極っているじゃないか」
酔って言うお種の言葉には嘘も駆引きもありそうがありません。
「それでわかるが、兵二郎は死んだ、お前はこれから長い先をどうするつもりだ」
「兵二郎なんか死んでしまえッ、男前も人柄も、付き合って見りゃ、三文の値打もあるわけじゃない。私は、つくづく思うよ、八さんに惚れないのが悪かったのだよ、畜生ッ」
と酒臭い息を虹のように吐いて絡み付くお種です。
「頼むから退いてくれ、話はそれでわかった、砂土原町の伊勢屋をさがせば、曲者が出てくるだろう」