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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
伜は菊次郎と言って、芝居の色子見たいな二十一の好い男、青瓢箪で、鼻声で、小唄の一つもいけて、女の子には持てるが、飯の足しになることは一つも出来ない」
「たいそう悪く言うぜ、怨みでもあるのか」
「質を置きに行って断られたわけじゃないから、恩も怨みもありゃしません、――その色息子の菊次郎が、自分の家の潮入の池から笹舟のような小さな釣舟を漕ぎ出し、隅田川の真ん中で引っくり返して、舟は両国の中程の橋桁に引っ掛けて居たが、本人は土左衛門になって、百本杭で見付かった」
「それは気の毒な」
「死んで見れば気の毒見たいなもので、そのうえ菊次郎には許嫁の娘があったんですよ」
「フーム」
「伊豆屋に引取られて、あっしもちょいと逢って来ましたが、とんだ良い娘でした。近いうちに祝言させることになっていたが、息子の菊次郎はそれを嫌って、向島あたりの凄いのに通いつめ、父親の伊豆屋徳兵衛は腹を立てて、押し籠め同様にしているという噂でした」
「よくあることだな」
「向島の凄いのは、あっしも見ませんが、許嫁というのは、伊豆屋の主人が若い時世話になったとかの武家の娘で、孤児になったのを、五年も前から引取って育てたということでした」