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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「へ、へッ、どうも、その節はまことに有難うございました」

そういえば、いつぞや平次が銭を飛ばして、身投げを救ってやった老爺です。

「ところで、とっさんは晩までこちらに居るだろうね」

「ヘエ、居りますつもりで」

「それでは、とっさんを見込んで頼みがある、引受けてくれるだろうか」

「それはもう、親分のおっしゃる事なら命にかけてもお引受けいたします」

「そんな大した事じゃないんだが、この寮の中には、お前さんほど気心の判った人はないし、第一死ぬ気にまでなった人なんだから、お前さんの正直は確かだ、――どうかすると、この役目が一番大事かも知れないよ、ちょいと、耳を貸してくんな」

平次は老爺の耳に口を寄せて、何やら囁いております。

「ヘエヘエなるほど、ヘエ」

「判ったか、人に覚られちゃ、何にもならないよ」

「ヘエヘエ」

老爺は唯々として向うへ行ってしまいました。まだ朝のうちで、そんな手廻しには、誰も気が付きません。

福屋善兵衛の最後の宝、五番目の栄三郎が狙われるであろうと思われている五日の朝から、平次は向島の寮に入り込んで、八門遁甲の陣を敷くほど念入りに準備を整えました。

曲者は玄関からも雨戸からも入るのではないということは、判りすぎるほど判っておりますから、今夜は外の警戒を一切撤回して、三十幾人の頭をすっかり家の中に集中してしまい