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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

が、大場の家の浮沈に関わることじゃ、捨て置くわけには参らぬ。半之丞、打って打って打ち据えいッ、黒助は水を掛けるのだ」

「ハッ」

馬丁の黒助は立上がって、番手桶の水をザブリと掛けました。初秋の肌寒い風が、半裸の美女を吹いて、そのまま燻蒸する湯気も匂いそうです。

「半之丞、打てッ」

「ハッ」

相沢半之丞、弓の折れを取って立上がると、三年越し寵愛した自分の妾の肉塊を、ピシリ、ピシリと叩きます。

「あッ」

キリキリと空に廻るお組の身体は、一塊の綿を束ねたように、絶え入るばかりもがき苦しみます。

「まだ言わぬか、女」

堪え兼ねて大場石見、一刀を提げたまま庭に降り立ちました。

「殿様、お怨みを申します」

「何?」

不意に、縛られた女の声を聞くと、大場石見は愕然として振り仰ぎました。

「永い間の非道ななされ方の酬いとは思いませんか。年々の不作も構わず、無法な御用金を仰せ付けた上、弥が上の徴税に、知行所の百姓は食うや食わずに暮しております」

「何、何を言う」

「親は子を売り、夫は女房に別れて、泣かない日とてはない何千人の怨み、公儀の御とがめは免れても、御墨付が紛失した上は、軽くて改易、重ければ腹でも切らなければなりますまい、おおいい気味」