Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

言うのです。

その上、今日まで内緒にしていた、お富との仲が、この心中騒ぎで一ぺんに知れたら、他の奉公人の手前、主人の三右衛門も、素直に許してはくれないかも解らず、いずれにしても、二人揃って増屋の敷居を跨ぐのは、どうも遠慮しなければならないように思われる、と言うのでした。

「それは一応尤もだが、金は働いて返す折もあるだろうし、二人の仲は、いずれは知れずに済まねえだろう。店へ帰って、大恩ある主人に安心させるのが、何よりの孝行というものではないか」

平次は口を酸っぱくして説き勧めますが、若くて一徹な二人は、心中の仕損ないの顔を、ノメノメと元の店へは持って行く気になりそうもありません。

「それでは、私の父さんは、すぐそこの浜町に居ります。行って相談してみましょうか」

お富はこう言うのです。漸く十九になったばかり、増屋の奉公人には相違ありませんが、女隠居の相手をしている可愛らしくも清らかな娘で、徳之助と並べると、歌舞伎芝居の道行を見るような、一種の情緒を醸し出さずにはいません。

死出の晴着のつもりでしょう。薄化粧に、一張羅らしい銘仙を着て、赤い帯も、黒い髪も、水へも火へも飛込みそうな、純情無垢の象徴に見えて、平次の目には危なっかしくてならないのでした。