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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「ね、親分、これだけで証拠は沢山でしょう、佐太郎の奴をしょっ引いて行きましょうか」

ガラッ八は囁きます。

「証拠はこれ一つでたくさんだ、佐太郎は下手人じゃないよ」

平次の言葉は予想外でした。

「親分」

「不足らしい顔をするなよ、――俺もお為の言うのを聞いて、てっきり下手人は佐太郎と思い込んだが、ここへ来てみると気が変った」

「ヘエ――」

「どこの世界に、血の付いた半纏を、これを見て下さいと言わぬばかりに、天道様の下にさらしておく下手人があるんだ」

「…………」

「それに、あれは昨夜取込み忘れた洗濯物で、まだ洗って手を通していないよ。あんなに袖なんか突っ張っているじゃないか、洗濯物を胸に当てて、人を殺す奴もないだろう」

「…………」

「まだある、下手人の着物なら、血が飛沫いているはずだ、あれだけひどく殴ったんだもの、――ところがあれは血を拭いたんだぜ」

平次の言葉は星を指すようです。

「なるほどな、恐れ入った、さすがは銭形の親分」

「おだてちゃいけない」

二人は踵を返そうとしました。

「銭形の親分」

不意に後ろから呼ぶ者があります。振り返って見ると、三十二三の小意気な男が、雨戸の蔭から、丁寧に挨拶しているのです。