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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「いやに東作、東作って言やがるじゃないか。誰が何と言っても嫌だよ。判ったかい、彦兵衛」

「野郎ッ」

二人は睨み合いました。争闘を始める一瞬前の猛獣のように――。

「ハッハッハッハッハッ、年は取っても、娑婆っ気は抜けねえぜ。とんだいい気合だよ、彦兄イ」

急に笑い出した東作の顔を、彦兵衛は眉も動かさずに睨み据えます。

「三百八十両、事と次第によっては、ずいぶん返してやらないものではないが、その代り、礼はするだろうな、彦兄イ」

「礼?――それはするとも、その日暮しの左官には、どうせろくな礼も出来ないが」

彦兵衛は緊張が緩んで、思わず肩を落しました。相手の様子に妥協的なものを読んだのです。

「礼と言ったところで、銭や金じゃねえ」

「…………」

「俺には少し望みがあるんだ。――外じゃねえ、三百八十両返しゃ、徳之助も無事に増屋に納まるだろう、お富とはどうせない縁と二人を諦めさせて、お富をこの東作の女房にくれる気はないか」

「な、何だと」

東作は大変なことを言い出しました。

「それが嫌なら、増屋へ乗込んで、手前の素性をみんなバラしてやるまでよ。江戸で指折の大店が、巾着切りの娘を嫁にするかしないか。