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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

「石見銀山があるだろうな」

平次は顔を挙げて、主人源吉の表情を追いました。

「へー、それがその、お越、お前は知っているだろうな」

照れかくしらしく、下女の顔を見やります。

「ハイ、あの、あんまり鼠がひどいんで、お松さんにお願いして買って頂きました」

お越は物を隠そうとする様子もありません。それほど無技巧に、忠実に使い馴らされたのでしょう。

「お松さんというのは?」

平次は言葉を挟みました。

「私の妹でございます。一度縁付いて、不縁になって帰って来たっきり、この七年間、世帯の切盛りをしてくれますが――」

主人は何となく妹の方へ疑いの行くのを好まない様子です。

「どこへその石見銀山を置いたんだ」

平次の問は委細構わずお越に突っ込んで行きました。

「人が触ったり、間違って食物に入ったりしては悪いと思って、お勝手の戸棚の上へ置きましたが」

「持って来て見せてくれ」

「ハイ」

お越は立ち去りました。その少し足を引きずる後ろ姿を見送って、

「あの女は信用していいだろうな、御主人」

平次は問いました。

「十七年の間に一つも後ろ暗いことのなかった女です。――今時、あんな奉公人はございません」