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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

平次は壇の上を一と廻りすると、静かに顔を挙げました。

「そいつは銭形の――」

浅吉は講中の一人であったらしく、平次の言葉に不平らしい様子です。

「これを見るがいい。床はガンドウ返しになって、煙が一パイになった時、東海坊はそっとスッポンへ抜ける仕掛けだったのさ」

「えッ」

「そいつが、何かの弾みで開かなかったんだ。東海坊が火に追われながら、床板ばかり気にすると思ったが、こいつだよ」

平次が指さした。

提灯を突き付けると、なるほど床板には二尺四方ほどの鋸が入って、何かの仕掛けで開くようになっているのが、厳重に締っていて、叩いても踏んでも開きそうになかったのです。

「フーム、天罰だな」

永村長十郎は唸りました。長いあいだ愚民を惑わしていた修験者が、命がけの詭計に失策して、猛火の中に死んだのも、江戸御府内の静謐を念としている長十郎にとっては、全く天罰としか思われなかったのでしょう。

「呆れた野郎だ」

浅吉はたった一ぺんに愛想が尽きた様子で、ペッ、ペッと唾を飛ばしております。

一刻(二時間)の後には野次馬もすっかり散り、永村長十郎も「東海坊の弟子どもや世話人一統は追っての御沙汰を待つように」