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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
「…………」
「これにはさすがに驚いた。危うく言い触らされそうになって、幾度止めたかわからない。しまいには、百両、三百両、五百両と、鰻上りの口止め料を取られ、下谷一番の油屋と言われた大徳屋の身上も、このままで行っては年一杯も保ちそうもない」
「…………」
「もう一つ悪いことに、娘の病気のことを言われたくなかったら、当人を谷中の堂へ奉公に出せ、――と東海坊が言い出した。それに相違あるまい」
「…………」
平次の論告はここまで来ると一段落で、しばらく口を緘んで、徳兵衛の出ようを見ました。行灯の灯芯はジ、ジと油を吸って、夏の虫はもう、庭で鳴いている様子。勢い込む八五郎の息づかいだけが異常に荒々しく聴えます。
「その通りでございます、親分さん。秘し隠したことをよくそれまでお判りになりました。全く恐れ入りました」
徳兵衛は畳の上に手を突いて、力が抜けたようにガックリとお辞儀をするのです。
「で、抜け穴から入って、龕灯返しの仕掛けを塞ぎ、東海坊を自滅させたというのだな」
平次はくり返して自滅という言葉を使いました。
「その通りでございます。火が燃え上がって、みんな壇の方に気を取られたとき、案内知った茶店の床下に飛込み、壇の下の穴の中に捨ててあった、石と材木の切れ端で仕掛けの下を塞ぎ、大急ぎで出て来ると、誰も気の付いた者はない様子