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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
「そんなら判ってますよ」
「どこだ」
「上野山下の闇がり横丁のお余乃の家で――」
「何だいそれは?」
「あんまり筋の良い家じゃありませんよ」
「行ってみよう」
平次とガラッ八がお余乃の家というのに行ったのは、もう亥刻過ぎでした。
「寝てしまいましたね」
「構わねえから、存分に叩け」
「ヘエ」
ガラッ八が栄螺のような拳固で続けざまに叩きまくると、
「ハイハイ、ただ今、どなたですか」
寝入りばならしい女の声が、戸を開け兼ねて躊躇している様子です。
「御用だ、早く開けろ」
「ハ、ハイ、今すぐ開けますよ」
ガラガラと開けて、寝乱れた姿を出したお余乃の前へ、八五郎の十手はピカリと光りました。
「御用だぞ、神妙にせい」
この時ほど銭形平次は御用風を吹かせたことはありません。寝巻姿のお余乃と下女のお六を二人並べて、
「ゆうべ寺本山平は何刻に来て、何刻に帰った。一度外へ出てまた夜中に帰ったか、それとも、遅くなってから来たか。真っ直ぐに申上げないと、お前たち二人とも殺しの巻添えで、ガン首が飛ぶぞ」
こんな時には、八五郎の方が遥かに睨みがききます。
お余乃は一応も二応も渋りましたが、下女のお六は、二つ三つどやし付けられると、他愛もなくベラベラとしゃべってしまいました。