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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

「それも解ってる」

木場から引揚げて、平次と八五郎は永代橋を渡るのでした。

「それじゃ下手人も解ったんですか、親分」

「解った心算だが、証拠が一つもない」

「誰です、親分」

「お前が考えたこともない人間だ。――そのくせ恐ろしい人間だよ」

「ヘエー」

「ところで、荘太郎とお道がなぜ祝言せずにいるか、本当のわけをお前知ってるかい」

「宝捜しのゴタゴタで――」

「そんな事もあるだろうが、本当のところは、あの祝言の邪魔をしている人間があるんだ」

「ヘエ、そんな野郎が居るんですか」

「野郎じゃない女だ、――お信が荘太郎の嫁になりたかったんだよ」

「ヘエ――、あの転婆娘がね」

「それに親の常吉もその気だったかも知れない。勇次郎と一緒にしたかったと言ったのは嘘だ」

「なるほどね」

「それから殺された勇次郎も、兄貴とお道の祝言には水を差していた。兄貴は人が好すぎるが、お道は人間が悧巧すぎる。どうも二人は一緒にしても仕合せになりそうもない――と言うんだそうだ。これは奉公人が皆知っている」

「なるほどね」

「それに番頭の有八も――」

「それじゃ店中皆んなじゃありませんか」

「でも本人同士は好きで好きでたまらないようだから、いずれ近いうちに祝言するだろうよ」