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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

文六は幾代を幸吉に取られる口惜しさに取逆上て、歯を剥いて二人を呪うのです。

「曙井戸の茶碗が出て来さえすれば、二万両の金が入るのだよ。浅田屋は貧乏揺ぎもしないだろうよ」

と平次。

「曙井戸が出て来てたまるものか、あれはもう、二年も前に土に還ったぜ」

「きっとか」

「念にゃ及ぶだ」

「俺が無事曙井戸を捜し出したらどうする」

「もう一つ、大きなことを白状してやるよ。そこにいる幸吉の父親、幸三郎の行方――」

「よし、見ているがいい」

平次は庭へ飛び降りると、いきなり枯れた松の盆栽に手をかけました。

「こんなに沢山ある盆栽の中で、松だけ枯れるのは変じゃないか。松は水をやらなくても保つものだ。こんなに枯れたのは、水はけが悪くなって、根を痛めてるために違いない」

鉢から松の枯木を引っこ抜くと、根の下にピタリとはめ込んだのは、美しい曙色の茶碗。さして汚れもせずに、平次の手の上に静かに載ったのです。

「あッ」

驚く人々の間から、わずかの隙を見て逃げ出そうとする文六。

「文六、卑怯だぞ、――約束通り、幸吉の父親を殺した経緯を白状せい」

平次はその襟首を押えて引戻すと、グイと膝の下に敷いたのでした。