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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十五)茶碗割り

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens

Aozora Bunko

「おや、銭形の親分」

ほぐれる人の渦の中へ、平次は入って行きました。死体はまだそのまま、鏡台はハネ飛ばされて、座布団の上から引摺りおろした恰好に、賀奈女の死体は横たわっております。

骨細ですが、よく引緊った肥り肉、――いわゆる凝脂が真珠色に光って、二十五というにしては、処女のような美しい身体を持った女です。

首に巻いたものは、赤い扱帯でもあることか、無残な荒縄。

「フーム」

銭形平次は死体の顔を一と眼、思わず唸りました。これが八丁荒らしと言われた魅力の持主で、神田中の若い男を狂わせたとは思われない悪相です。

「本性が出たんだね、親分。――怖いものじゃありませんか」

八五郎は囁きます。

「お前も講中の一人だったじゃないか――こうなりゃ仏様だ、悪く言っちゃ済むめえ」

平次は有合せの浴衣を顔へ掛けてやって、神妙に双掌を合せるのでした。

「そう思って、先刻からふんだんに線香を上げてますよ」

無駄を言いながらも、二人は念入りに家の中を調べ、死体の位置と、出入口の関係を見、集まった人達の噂などを集めました。

「なくなった物は一つもなし、――家の中には少し泥が落ちていた――もっともこれはわざとやったのかも知れない。