Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十五)茶碗割り
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十五)茶碗割り (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,804 characters · 225 screens
ガラッ八は月の光や、次第に集まってくる提灯の光の中で、死骸を眺めながら、こんな遠慮のない事を言うのでした。
見る影もない死にようですが、染吉というのはよっぽどの洒落男だったらしく、妙に金のかかった身の廻りや、身だしなみの良い小意気な男っ振りなどを見ると、女で問題を起し兼ねない様子です。
一と通り検屍が済んだのはもう亥刻(午後十時)近いころ、平次は紙入と煙草入だけを、二三日借りることにして、現場を引揚げました。
「八、ちょっと付き合ってみないか」
「一杯やらかすんでしょう、へッ、へッ」
「馬鹿だなア、付き合えって言えば、飲むことだと思ってやがる。染吉殺しはまだ目鼻もつかないじゃないか。明日の天道様の出る前に、もう少し当っておきたいところがあるんだ」
「へッ、付き合いますよ。――酒は御免を蒙るが、憚りながら御用と来た日にゃ、夜が明けたって日が暮れたって驚きゃしません」
「急にいきり出すじゃないか、――飲み損ねて口惜しかろうが、そんなに十手なんか突っ張らかさなくたっていいよ」
そう言いながら、平次が叩いたのは、妻恋坂の荒物屋の戸でした。
そこには六十を越した父親の周吉と、十九になったばかりの娘のお芳と二人っきり、夜更けに顔見知りの御用聞――銭形平次に飛込まれて、さすがに胆をつぶした様子です。