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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
敵は幾人居るか判らぬが、兎にかく石を投げ尽したらしい。今度は木のような物や、骨のような物を投げ初めた。骨は尖っているので、巡査は又もや左手を傷けた。
もう仕方がないので、巡査は剣を抜き閃かした。或者は猟銃を撃った。散弾が轟然として四辺に迸ると、頑強の敵も流石に胆を挫がれたらしい、踵を旋してばらばらと逃げ出した。巡査等は勝に乗って追い詰めると、穴は漸く広くなった。ここが恐く行止りで、彼等は今や袋の鼠になったろうと思いの外、何処を何う潜ったか知らず、漸次に跫音も消えて了って、後は寂寞たる闇となった。
「奴等は何処へ隠れたろう。」
松明は再び点されたが、広い穴の中に何者の影も見えなかった。幾ら※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)でも隠形の術を心得ている筈はない。恐く何処にか隠れ家があろうと、四辺を隈なく照し視ると、穴の奥には更に小さい間道が有った。彼等は此処から這い込んだに相違あるまい。巡査等は続いて其穴を潜った。
穴は極めて低く狭いので、普通の人間には通行甚だ困難であったが、人々は宛ら蝦蟇のようになって僅に這い抜けた。行くに随って水の音が漸々に近く聞えた。