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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
」
重蔵も漫ろに三十年前の夢を辿って、谷川の流に映る自己の白髪頭を撫でた。それに付けてもお杉は何うしたろう。生きては俺を恨んでいるだろう、死んでは俺を呪っているだろう。
「俺も悪いことを為た。」と、彼は今更の様に悔恨の情に打たれた。が、其のお杉は二十年前から此の旧巣へ戻って、加之も今や其の老たる屍を窟の底に横えていようとは夢にも思い及ばなかった。何はあれ、ここは屈竟の隠れ家である。万一、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)が昔のままに棲んでいるならば、之に乞うて何等かの食物を得て、一時の空腹を凌ごうとも思った。其昔、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)を友としていた重蔵は、他の人のように※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)を恐しい者とも思わなかった。寧ろ旧い友達を尋ねて、当分の隠れ場所を借りようか位に思っていたのである。
彼は窟に暫く棲んでいたので、岩穴から此の川辺へ抜け出る間通を心得ていた。彼は直ちに其穴を見出して、蛇のように潜り込むと、暗い中で恰も彼の市郎に出逢ったのであった。市郎は彼が家出の後に生れた児であるから、相互に顔を見識ろう筈はなかったが、其詞の端に因て、重蔵は早くも彼が角川家の倅であることを悟った。