Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
何時までも乞食をしているより他はあるまい。いや、其の乞食すらも満足に能るか何うだか解ったものでは無い。斯うなると、人間よりも犬の方が寧そ優である。お葉は犬にも劣った重太郎の不幸に泣いた。
が、二人は何時までも泣いている場合でなかった。追手は美濃屋の庭を探し尽して、更に両隣を猟り始めた。人の声が漸次に近いた。警官の角燈が雪に映じて閃いた。
「あ、此方へ来たよ。」
お葉が眼を拭いて起ち上ると、重太郎も無言で起った。雪を踏む大勢の跫音が隣に近いて来た。
危険が漸く迫ると知って、重太郎の眼は俄に嶮しくなった。彼は例の野性を再び発揮したのであろう、洋刃を逆手に持って庭の真中に進み出た。
「其方へ行っちゃア危ない。此方から窃と出る方が可い。」
お葉は素足で雪を踏んで、庭口の裏木戸を音せぬように明けると、重太郎は何にも云わずに走って出た。何を思い出したか、お葉は急に「あ、鳥渡……。」と呼び止めたが、重太郎は見返りもせずに駈けて行った。
たとい乞食をするにしても、土方をするにしても、之から他土地へ行こうと云うには、多少の路銀が無くてはならぬ。咄嗟の間にお葉は之を思い出したのであった。