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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
湯ももう沸いたようです。
(重兵衛は太吉を横目に睨みながら、自在の湯沸しを取って下のかたへ行き、棚から土瓶をおろして茶の支度をする。梟の声。)
旅人 (これもやや恐怖を感じたように。)あ。あの声はなんですか。
重兵衛 梟ですよ。
旅人 忌な声ですね。
重兵衛 あなた、聞いた事はありませんか。
旅人 下町に住んでいたので、聞いたことがありません。いや、どこかで聞いた事があるかも知れないが、あんな忌な声だとは思いませんでした。(梟の声つづけて聞ゆ。)ああ、又啼いている……。なんだか人を呼んでいるようですね。
重兵衛 わたし達は年中聞き慣れているので、なんとも思いませんが、たまに聞く人には忌な声かも知れませんね。
(重兵衛は盆の上に土瓶と茶碗を乗せて、再び炉の前に来る。)
重兵衛 こんな所ですから穢い茶碗で、まあ御勘弁ください。
旅人 色々御厄介になります。(茶をのみながら。)さあ、遠慮なしに喰べて下さい。(鮓の折を差出す。)子供さんは嫌いですか。
重兵衛 嫌いどころか大好きで、飛び付いて喰べるのですよ。(太吉に。)これ見ろ。おまえが大好きな玉子もあるぞ。