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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
旅人 (笑う。)わたしがよっぽど嫌われたと見える……。いや、わたしはこの子ばかりじゃあない、誰にでも嫌われるような人間に出来ているんです。
重兵衛 それこそ御冗談でしょう。御馳走になったからお世辞をいうのじゃあねえが、あなたのような人を嫌う者はありますまい。はははははは。
旅人 (力強く。)いえ、嫌われますよ。取分けて女には嫌われたり、だまされたり……。まったく哀れな人間です。
重兵衛 (笑いながら。)あなたは裏を云っているのじゃありませんか。
旅人 裏も表もない。ほんとうのことですよ。現に今度の旅行でも、ゆく先々で忌がられたり、嫌われたり、どこでも好い顔をされませんでした。
重兵衛 なぜでしょう。
旅人 わたしがそういう人間に出来ているんでしょう。
重兵衛 そうですかねえ。
(話に継穂がなく、二人は黙って烟草を吸っている。下のかたよりおつや、二十四五歳、熱海あたりの芸妓とおぼしき風俗にて出づ。おつやは頗る威勢のいい女、少し酔っている。)
おつや (窓の外より呼ぶ。)おじさん。黒い小父さん。
重兵衛 誰だ。(覗いて。)おお、おつやか。今頃どうして来た。