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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens

Aozora Bunko

(旅人の背中を軽く打つ。)はははははは。

重兵衛 よく笑う女だな。お前ひとりで喋っているので、騒々しくてならねえ。いくら山の中の一軒家でも、ちっとは遠慮するものだ。おれはお客様と静に話をしているから、おまえのようながらッ八は、太吉と一緒に奥へ行って、早く寝てしまえよ。

おつや あら、あたしを先へ寝かそうと云うの。この夜の長いのに、独り者が今から寝られますかよ。(旅人に。)あんた、何時……。

旅人  (腕時計をみる。)九時二十分過ぎです。

おつや 九時二十分……。あたし達にはまだ宵の口だわ。それにしても太ァちゃんは眠いだろうね。(うしろを見かえる。)あら、おかしな子だねえ。さっきから何だか邪魔だと思ったら、あたしの帯にしっかりと獅噛み付いて、これが本当の腰巾着というんだね。(鮓を指さして。)お前、これを食べないのかい。さあ、おたべよ。

(おつやは海苔巻を一つ取って遣る。太吉は旅人の顔をぬすみ視ながら頭を振る。)

おつや 忌かい。たべないのかい。(これも旅人をみかえる。)この子はやっぱり人みしりをしているんだねえ。じゃあ、もうお寝な。

重兵衛 そんな奴はあっちへ連れて行って、寝かしてくれ。