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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
重兵衛 (曖昧に。)ええ。
旅人 だんだんに夜は更ける、風は寒くなる。これから山越しをするのも難儀ですから、いっそ今夜は御厄介になりましょうか。
重兵衛 (やはり曖昧に。)そうですか。
(おつやはそれを洩れ聞いて俄に決心し、正面の入口へまわって、戸を少し明けながら内を窺っている。)
旅人 (遠慮勝に。)泊めて貰えませんか。御迷惑ですか。
重兵衛 迷惑というわけでも無いのですが……。
おつや (思い切って、戸をあけて入る。)おじさん。あたしもさっきお泊んなさいと云ったけれど、いけないわ。
旅人 いけませんか。
おつや (努めて勇気を振い起して。)いけませんわ。よく考えてみると、警察がやかましいんですよ。
旅人 (眼をかがやかして。)警察が……。
おつや ええ。宿屋でもない家で、知らない人をうっかり泊めると、警察が非常にやかましいんです。ねえ、おじさん。(眼で知らせる。)そうだわねえ。
重兵衛 (曖昧に。)むむ。
おつや それですから、折角ですがお断り申しますよ。
(おつやの態度が一変したのに、旅人もやや意外らしく、だまって何か考えている。障子の内にて太吉の声。