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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
(考える。)あんなおとなしい人が人殺しのお尋ね者とは、今まで些っとも気が注かなかった。
おつや それだから、あたしがトテモ凄いと云ったのよ。(思い出したようにぞっとして。)ねえ、おじさん。あたし達の眼にはなんにも見えなかったけれど……。あの人のうしろには殺された女の魂が、影のように附き纏っていたのかも知れないわ。
重兵衛 (又かんがえる。)そんな事もあるまいよ。
おつや それでなけりゃあ死神だわ。あの人、いくら逃げまわっても、どうせ助からない人ですもの。行く先々へ死神が附いて廻っているのよ。
重兵衛 女の魂だの、死神だのと……。ここらでも今時そんな事をいう者はねえが……。
おつや いいえ、そうよ。屹とそうよ。あの人は何かに執り着かれているに相違ないわ。(太吉の手を把る。)太ァちゃん。お前、なにか見なかったかい。あの人のうしろに……何かぼんやりと……影のような物でも見えやあしなかったかい。
太吉 (頭をふる。)知らないよ。
おつや それでも怖かったろう。
太吉 (うなずく。)ああ、怖かったよ。あの人、屹とお化けだよ。
おつや そうだ、そうだ。おじさんは今でも平気でいるようだけれど、どう考えてもあの人は唯の人じゃあない。