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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
ものですな、実はこの婦人に就ては一条の噺があるので」と、曩に彼の別荘の番人が語った通りの昔語、それを聞けば最早疑うべくもないが、いまは百年も昔の事、其の以来曾て斯る怪異を見た者もなく、現に十五六年来も其の別荘に住む番人夫婦すらも、曾て見もせず聞きもせぬ幽霊の姿を、無関係の私が何して偶然に見たのであろう、加之も二晩もつづけて見るというのは実に解し兼ぬる次第で、思えば思うほど実に不思議な薄気味の悪い噺だ。で、主人の驚愕は私よりも又一倍で、そう聞く上は最早一刻も猶予は出来ぬ、早速その窓を取毀し、時宜に依れば其の室全体を取壊して了わねばならぬと、直に家令を呼んで其の趣を命令した。で、今頃は其の窓も容赦なく取毀されて、継母の執念も其の憑る所を失ったであろうか。
以上が画工エリックの物語で、同雑誌記者の附記する所によれば、彼の画工の筆に成った恐しき婦人の絵姿は此のほど全く出来したが、何さま一種云われぬ物凄い恐しい顔である、婦人の如き、其の図を一目見るや忽ちに魘えて顫えて、其後一週間ほどは病床に倒れたという。で、普通の日本人の考慮から云うと、殺した