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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
、第4水準2-80-51)とは何だろう。矢はり猿か狒々の一種か知ら。」と、市郎は頻に考えた。
七兵衛が去った後の裏庭は閑静であった。旭日の紅い樹の枝に折々小禽の啼く声が聞えた。差したる風も無いに、落葉は相変らずがさがさと舞って飛んだ。
「市郎、大分寒くなったな。」と、父の安行が背後から声をかけた。安行は今年六十歳の筈であるが、年齢よりも遥に若く見られた。
父がここへ来たのは丁度幸いである。市郎は彼の※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)に就て父の意見を訊すべく待ち構えていた。が、父の話は其んな問題で無かった。
「時に忠一さんから何か消息があったか。」
「何でも来月初旬には帰郷するということでしたが……。」
「そうか。それは好都合だ。」と、父は満足の笑を洩らした。
「ですが、私の為に態々帰郷させるのも気の毒ですから、此方は別に急ぐ訳でもないから、冬季休業まで延期しろと云って与りました。」
「そう云って与ったか。」と、安行は少しく不平らしい口吻で、「当人が帰ると云うなら、帰って来いと云って与れば可いのに……。成ほど、今の所でお前の婚礼を急ぐにも及ばないが、決った事は早く行って了うに限る。