Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
帰れたら帰るとか、帰れないかも知れないけど、なるたけ帰つてくるわ、とか、変に、煮えきらないのよ」
彼は、真喜がブツブツいうのを面白がつてきいていたけれども、母の弓は、それを引きとつて、
「お前だつてそうじやないか。帰ると思つたら帰らないことが、よくあるくせに……」
それを、そう角を立てゝ言つたわけでもないのに、真喜は、もうむきになつて、
「へ、あたしは、帰れない時に、帰るかも知れないなんて、言いませんよ。出かける時は、帰るなら帰る、帰らないなら帰らないつて、はつきりさせてるわ。それや、予定が狂うことはあつてよ。それや、しようがないわ」
母は、もう、かなわぬという風に、
「もういゝから、早く、お父さんに、ご飯だつてお言い」
父は、近頃、退屈とみえて、しばらく手にしなかつた碁石をひとりで並べている時が多かつた。
食卓についても、あまり口を利こうとせず、好きな晩酌もいらぬと言つて、そのくせ、淋しそうに箸を動かした。
母は、落ちつかぬ気持を強いて押し静めようとして、当り障りのない話題をさがし、それに誰も返事をせぬので、ひとりでなにやら合点しながら、そゝくさと茶を飲んだ。