Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
三
「あら、そんなにおつしやらなくつたつていゝわ。あたしで、お役に立つことつていえば、こんなことぐらいだわ」
道は暗かつた。女は、時々、なにかにつまずいて、彼の腕に縋りついた。はじめは、それでも遠慮がちなところがみえ、すぐからだをはなしたけれども、彼がさほどそれを気にせぬ風をみてとると、しまいには、よろめいたついでに、彼のぶらりとさげた手に、自分の華奢な手をことさらからませて、じわりと握つた。
彼は、この戯れにこたえる方法を知らなかつた。彼は、いつまでも、無感覚を装うよりほかなかつた。相手は、図に乗つて、彼の指を弄び、掌をくすぐり、さては、その一つ一つの指を彼の指の間に割り込ませて、力いつぱいに押しつぶすような仕草をした。
「痛い」
と、彼は、そうさせたまゝ、無意識に言つた。自分でも、それはおかしかつたが、そう言いでもするより、しかたがなかろうとも思つた。
「あんたは、真面目なの、臆病なの?」
と、女は、しめつた声でたずねた。
「僕? さあ、真面目でもなく、臆病でもない、つていうところかな」
と、彼は、すこし挑戦的な身構えで答えた。
「あたし、ちよつと、浮気がしてみたいの」