Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
三
「好きじやないが、つきあい酒ならつていう口か。おれとおんなじだ」
「おやじはどうだかな。偽善だよ。子供の教育によくないと思つてるんだ」
「それほどでもあるまい。以前よりはだいぶん砕けて来たじやないか」
「うん、もつと砕けりやいゝんだよ。とにかく面白くねえよ、おやじは」
そう言いながら、弟の深志は、階下へ降りて行つた。と、入れ代りに、妹の多津が、速達が来たといつて、彼の手に一通の封書を渡した。
三
達者な行書で、たしかに見覚えのある字体ではあつたが、一瞬、彼の頭は混乱して、信州松本在に住む六笠久史なる差出人の見当がつきかねた。
が、封を開いて、和紙の水色の書簡箋にやゝ薄めの墨で、まず、京野等志さま、と書き出した、その調子で、彼はやつと、さてはと思い、急いで最後の署名をたしかめ、もう、息づまるような胸さわぎを覚えた。
署名は、たゞ、「小萩」としてあつた。
とつぜんこんなお便り差しあげ、さぞ意外に思召すことゝ存じます。お別れしてまる七年、最後のお手紙いたゞいてから、もはや六年になります。過ぎ去つた長い年月は、わたくしにとつて、たゞ空しく生きた月日でございました。