Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
Lesen Sie 光は影を (ひかりはかげを) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.262 Zeichen · 276 Bildschirme
僕は、はつきり言うが、そんなことは、なんとも思つてやしない。むろん、君を責めたり、恨んだりする筋合のもんじやない。長久保それがしという男なんぞ、僕は、君の夫だなんて思つてやしなかつたくらいさ。いや、これも、失言にちかい誇張だが、ほんとに、君というひとは、そんな関係からは、まつたく独立した永遠の僕の偶像さ。仏さんの前で坊主がなにをしたつて、それで仏さんのねうちが減るもんじやないからね」
「そういうたとえを、いくら上手におつしやつたつて、あたしの胸に、ぴんと来ないから、いや……。あたしは、たかだか女よ。生身の女よ。一度失つたものは、もう取り返すことのできない、あわれな女よ」
「そんなことを、あわれがるほど、僕はおめでたくないよ。なんだい、その、一度失つたものつていうのは……? まあ、それも、僕へのいたわりのつもりなら、黙つて聞いておくけど、そういう感傷は、僕たち二人の間には、用はないものとしておこうよ。僕はたゞ、君の善意、情熱、それから、女らしい欲望、それだけでたくさんだ。あとは、たゞ、露骨に言えば、君の、その、ふつくらとした……。よそう、あぶないから……」