Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
わたくしの乏しい見聞によると、およそ愛の表現としてこの像は世界の芸術の内に比類のない独特なものではないかと思われる。これより力強いもの、威厳のあるもの、深いもの、あるいはこれより烈しい陶酔を現わすもの、情熱を現わすもの、――それは世界にまれではあるまい。しかしこの純粋な愛と悲しみとの象徴は、その曇りのない純一性のゆえに、その徹底した柔らかさのゆえに、恐らく唯一のものといってよいのではなかろうか。その甘美な、牧歌的な、哀愁の沁みとおった心持ちが、もし当時の日本人の心情を反映するならば、この像はまた日本的特質の表現である。古くは『古事記』の歌から新しくは情死の浄瑠璃に至るまで、物の哀れとしめやかな愛情とを核心とする日本人の芸術は、すでにここにその最もすぐれた最も明らかな代表者を持っているといえよう。浮世絵の人を陶酔させる柔らかさ、日本音曲の心をとろかす悲哀、そこに一味のデカダンの気分があるにしても、その根強い中心の動向は、あの観音に現わされた願望にほかならぬであろう。法然・親鸞の宗教も、淫靡と言われる平安朝の小説も、あの願望と、それから流れ出るやさしい心情とを基調としないものはない。