Japanische Klassiker mit Furigana
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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
Lesen Sie 古寺巡礼 (こじじゅんれい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.765 Zeichen · 285 Bildschirme
七
(五月二十日)
七
疲労――奈良博物館――聖林寺十一面観音
一日の間に数知れぬ芸術品を見て回って、夕方には口をきくのが億劫なような心持ちで帰ってくる。しばらくは柔らかい椅子に身を埋めてぼんやりしている。やがて少し体が休まると、手を洗って、カラアをつけ変えて、柔らかい絨氈の上を伝って、食堂に出て行く。Z夫人はいつのまにかきれいに身仕度をして、活き活きと輝いた顔を見せる。できるだけ腹を空かせている上に、かなりうまい料理なので、いいこころもちになってたらふく食う。元気よくおしゃべりを始める。今日見た芸術品について論じ合い、受けて来たばかりの印象を消化して行くのは、この時である。が、食堂を出る時分には、腹が張った上に、工合よく疲れも出て、ひどくだるい気持ちになる。喫煙室などへ行っても、西洋の女のはしゃいでいるのをぼんやりながめているくらいなものである。
さてそれから室へ帰って風呂にはいると、その日の印象を書きとめておくというような仕事が、全く億劫になってしまう。印象は新鮮なうちに捕えておくに限るのであるが、それがなかなか実行し難い。手帖の覚え書きはだんだん簡単になって行く。