Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
そこへ飄然と竜之助が帰って来ました。
「いま帰った」
竜之助の面の色はいつもよりも一層蒼白く、お浜と郁太郎とをひとめ見たきりで、さっさと次の間へ行こうとする。お浜はこの時、腸の底まで竜之助の憎らしさが沁み込んで、
「あなた、この子は誰の子でござんしょう」
その声は泣き声でありましたから、竜之助はその切れの長い目でジロリと、
「誰が子とは?」
「坊やは誰の子でしょう」
「何をいまさら」
「郁太郎はお前様の子ではありませぬ」
「何を言うのだ」
「この子は死んでしまいますのに」
「なに?」
竜之助は、お浜の例の我儘な突っかかりが始まったと思うたが、今日はそんな嚇し文句に対して思いのほか冷淡で、
「寿命なら死ぬも仕方がない」
「まあ……」
お浜は凄い目をして竜之助を睨みました。竜之助もまた沈み切った眼付でお浜を睨み返す。いつもならばここで癇癪が破裂して、生きるの死ぬのと猛り立つべき場合であったのに、今日は不思議にも二の句をついで何とも言い張りません。
竜之助はそのまま次の室へ入って、机に向って暫らく茫然と坐っていましたが、自分で燈火をつけて、それから料紙、硯箱を取り出して何か書き出したものと見えます。