Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
そして口三味線で上方唄をくちずさんでいたりした。また唯一の医薬には、軒ばに干してある馬の男根を小刀で削っては、それを煎じて飲んでいたという。そういう物が効くという迷信が行われていたのであろうか。
ところが、この秋山氏が機嫌よく病苦を忘れて上方唄など口ずさんでいる、とそこへしばしば、銀左衛門がやって来て、「この面よごし」と罵ったり、時によると、「貴様のような恥さらしはない、恥を知れ、自分で身の処置ができないなら、親のわしが成敗してやる」と、ほんとに刀を抜いたこともあったそうだ。
足腰も立てない秋山氏は、そんな時、銀左衛門のまなじりに向って、ただ両手を合せて拝んでいたという事である。いずれは、家族総がかりで銀左衛門をなだめた事にちがいあるまい。そして又、何か世間で耳づらいことでも聞くと、居ても立ってもいられなくなり「斬ッてしまう」と秋山家の南縁に突っ立っては、秋山氏から拝まれて、拝まれ負けして帰った事にちがいない。
明治に入って、廃藩になると、この秋山氏も士分だけの一時金を政府から貰った。その金で当時の小田原の遊所に通っては「一歩だからいい。一歩だから」