Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
――何でも薄々ぼくらも覚えているが、見つけない、いろんな男が掛合いに来、また仲介人が入ったり、しまいにはお茶屋の女将らしい人々まで来て、父の居ない留守に母を説くなど、ごたごたし通していたような記憶がある。
こんな問題は、今なら殆ど問題になるまい。しかし明治の静かな世間では、物議の元になったのだった。一般の通念にある風儀道徳とか、つよい家族連帯の責任などから、義兄の勤務先の左右田銀行や父の周囲にも憚られたにちがいない。――結局、父が折れて「結婚させる」そして「家庭に呼びもどす」となったのである。人いちばい自我のつよい頑固な父も、子の為に、煮え湯を呑む思いで忍んだものだろうと察しられる。そして嫁入り支度、婚礼費用一切のほか、ついでに山田からはいろんな負担を持ちこまれ、物質的にも相当痛いことであったらしい。
挙式はどこでしたのか、式も披露宴も、自宅で行ったのか、その辺はよく覚えていないが、とにかく嫂の嫁入りは夏の暑い頃であった。二階の四部屋ほどが全部客席にあてられ、階下には茶屋の女将や男衆までが来て配膳にかかりきっていた。ぼくら子供は、この盛観にはしゃいで、口取りのキントンや蒲鉾の列に眼をみはり、母から「外へ行って遊んでいらっしゃい」