Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
けれど、母が、異母子のぼくの義兄を、心から庇っていた優しさは、その後も変ることはなかったし、ぼくら小さい者が「兄さん、兄さん」と、寄りたかって慕う様も、父の機嫌がどうであろうと、何の変化もありはしなかった。
殊にぼくはそろそろ学科以外の読書欲に燃え出し、少年雑誌へ投書することを覚えたり、学友間でコンニャク版の同人雑誌めいた物を出しあったりし初めたので、そういう話し相手には、家では義兄以外に語る人はいなかった。よく作文を見てもらったのも義兄だし、自分の想うこと何でも、とにかく、十七文字にまとめてごらんと、初めて俳句かの如きものをぼくに作らせたのも、この義兄であった。
義兄にすすめられて、俳句らしきものを作りかけた頃の、その俳句では、ひどく心外だった事がある。
小学校での綴り方は、その頃、記事文といったり、普通、作文といったりしていたが、いわゆる文章体で、たとえば“某日友人ト観梅ニ行クノ記”とか“天長節ノ感”とか題からして漢文調のものだった。
その作文の中に、ある折、俳句を入れて、先生に出しておいたのである。水谷先生であった。この半禿頭の温雅な先生は授業熱心で生徒によく慕われていた。