Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
それよりも、英さんはこれからどうする気」と、ぼくへ訊ねた。
ぼくはこの小母さんにいつか甘えきッた気持ちになっていたらしい。とても出来ない相談に極まっているのに「ぼくは中学へ入りたいんです。どんな苦労してもいいから」と、真剣に訴えてしまった。母は聞くのも辛そうに顔をそむけたきりだった。しかし小島の小母さんは、まともに、ぼくの顔を凝と見つめて「ほんに、そうだろうね、ああ、よく分ってるわよ。だがね英さん、あんたが働かないで誰が今、おっ母さんの力になって上げるのさ。だから夜学でもいいじゃないの。昼間は働いて、夜学に通えるように小母さんも考えといて上げるからね」と、頻りになだめてくれた。ぼくは他人へのひがみを抱きながら、この人のような前では、洟も涙も一しょくたにして、だらしなく顔をこすッた。
小母さんはその後、ぼくの職業やら勉学の道を夫君の小島市太郎氏に相談して内々心配していてくれたらしい。けれど税務監督局の一官吏に過ぎない小島さんなので早速な思案もなかったろうし、ぼくの母もこれ以上の世話になるのはと、慎しみがちに、わざと不沙汰していた。というよりも母は、ぼくの稼ぎも無くなってからは、一そうその日その日の凌ぎに追われていたことだろう。