Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
けれど、君なら保証して世話して上げられそうだから、きっと探して上げますよ」と、毎日、ぼくの職探しの為だけのように、どこかへ出かけて行った。そしてたしか正月五日だったかと思う、丸ノ内の或るパン屋へぼくを連れて行ってくれた。
いま考えると、そのパン屋は、数寄屋橋から日比谷交叉点へ出るあの大通りであった。けれど当時は、日比谷寄りの方が、サンドイッチの一片の如き三角な街になっていた。そして街の尖った先が、数寄屋橋方面へ向いており、大きなパン屋の店がそこの角地を占めていた。
あいにく店主が不在で、長時間待ったが、会えずに帰った。すると翌日、もう一軒べつな口があるが、そこへ行ってみるかとの話が出た。そこで急に気を変えて、こんどは紹介状だけを貰って、一人で行った。本所菊川町の小さい螺旋釘工場であった。
五十がらみの素朴な工場主であった。物を云うにも、咄々と、どもる癖のある人の好さそうな人で、自分も工員とおなじ油ジミた作業服で、一日工場で立ち働いていた。食事付き日給二十八銭、宿舎費はべつ。日曜は休む。仕事は午後五時半までとの事。何か自分の条件に合う気がしたので、すぐ使って貰うと決め、その晩から工場の二階に八、九人の職工たちと一しょに寝た。