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Japanische Klassiker mit Furigana

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たんていやわ

探偵夜話

岡本 綺堂

Lesen Sie 探偵夜話 (たんていやわ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 140.363 Zeichen · 277 Bildschirme

Aozora Bunko

その晩、雛吉は得意の新口村を語ったが、途中から喉の工合いがおかしくって、持ち前の美音が不思議にかすれて来た。それでもその場はどうにかこうにか無事に語り通したが、あくる朝から彼女の声はまるでつぶれてしまった。勿論、すぐに専門の医師の治療をうけて或る程度までは恢復したが、その声はもう昔の美しさを失ってしまった。

雛吉が人気盛りであるだけに、その不幸に同情する者も多かった。声の美しさが衰えたといっても商売が出来ないほどではなかった。初めから現在の雛吉よりも悪い声をもっている太夫も世間にはたくさんあったが、女の芸人として唯一の誇りを失った彼女は、再び芸を売って世間に立つ心は失せてしまった。周囲の人達がしきりに止めるのも肯かないで、雛吉は思い切って鑑札を返納して、素人の大八木お春になった。寄席の明き株を買ってやろうなどと言ってくれる人もあったが、彼女はそれをも断わって故郷の埼玉県へ帰ってしまった。声変わりのした鴬――ゆく春と共に衰えゆく身の行く末を、雛吉はおそらく想像するに堪えなかったのであろうと、日頃の気性を知っている人びとからいたまれた。

こういう悲惨な運命をになって東京を立ち退くことになった竹本雛吉に対して、世間の同情はおのずと集まって来た。