Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

主水之介の目がキラリと光りました。

「まだ出ると申したか」

「今別れろ、別れると約束するまでは何度でも迷って来るぞと、気味のわるいことを言いのこして、ふわふわと消えていったんでござんす」

言うか言わないかに、ふわりと薄暗い庭先へ浮いた影がある。

血を浴びたおどろ髪の十五郎なのです。

刹那。

「あッ」

と言ってその十五郎がおどろいたのと、

「まてッ」

叫んで主水之介が庭へ飛びおりたのと同時でした。

逃げ走る影をみると、同じ姿の同じ血を浴びた十五郎がふたりいるのです。

「たわけッ。化けたかッ」

声と一緒に泳いで五尺、主水之介の手が手馴れの一刀にかかったと見るまに、見事な一斬り、五千両が程の涼しさでした。すういと薙いでおいて、逃げのびようとしていた今ひとりの十五郎へ躍りかかると、

「面体みせい!」

襟首押えて引きすえた下から、声がもうふるえているのです。

「相すみませぬ。十、十五郎ではござりませぬ。お見のがし願わしゅうござります。手、手前でござります」

「控えろッ。どこの手前かその手前を見るのじゃ。梅甫、灯りを持てい!」

灯りをさしつけて見しらべると、傷なぞある筈はない。