Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

もう九時すぎていた。久振りでボートをこいだり、陸地を歩いたりして疲れていたので、僕は電灯を消して眠っていた。その電灯がパチッとついて「ヘイ、イシ!」とPが鉄のはしごを下りて来た。半靴と白い靴下と下シャツとカーキのシャツを持っている。「下シャツは少々よごれているが、よかったら着ていな」というのである。

数日後、再びマニラに入港した時、僕はこれ等の品をPに返そうとした。水が無くて洗うことが出来ず済まないが……というと、Pはいかにも意外だという顔をして、「俺は君にそれ等を持っていて貰いたいのだ」といった。官給品は一つもなく、みんな自分個人の物だから返すには及ばないという。Pのくれたカーキのシャツは、いまだに着ている。両方のポケットと背中に、Pの頭文字がステンシルしてあるのもいい記念である。

その日の午后、上陸用舟艇は防波堤の外に仮泊していた。いつの間にか白い服に着かえたPがやって来て、「一寸来い」といった。舳の所が高くなり、ここに高射砲があり、その周囲は一方を残してまるく鉄板でかこってある。その内側に入ってしゃがむと、艦の他の場所からも、また艦橋からも、そこは完全にかくれる。