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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

Pはいった――「俺は今から上陸する。君は誰かに手紙を出したくはないか。封筒と切手を持って来たから、何か書くことがあったら早く書きなよ。陸へ上ってポストに入れてやるから」と。そして彼は航空郵便用の封筒と六仙の切手を二枚僕に渡した。捕虜である僕に文通の自由が許されている訳はない。Pはそれを察して、僕の代りに投函してやろうというのである。だが僕はさしあたって誰に手紙を出すあてもなかった。そういうと、「それならそれでいい。その内に役に立つかも知れないから、封筒と切手は持っていなよ」といった。この封筒も僕はPの友情の記念として、いまだに保存している。

つづいてPはポケットから比島の紙幣を三枚ばかり取出した。何かの必要があるかも知れないから、これを持って行けというのである。これも僕は断った。上陸してPWの収容所へ送られれば、金は持っていても何にもならぬからである。するとPは、何か本当にいる物はないかと聞くのであった。「君は何も持っていないじゃないか。困るぞ」という。「いや、大丈夫だ。何もいらない、本当にいらない。だが、君の親切はとても有難い」というと、「本当にいいのかい」